鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「リーダーシップでいちばん大切なこと」

・リーダーシップでいちばん大切なこと
著者:酒井穣
出版:日本能率協会マネジメントセンター



震災前の予約を入れていて、震災後に読んだ一冊。


今のタイミングで「リーダーシップ」と言われると、菅首相や東電の役員陣の顔が浮かぶ。
でもそういう趣きの本じゃないんだよね。
むしろ震災の混乱の中で、自分自身がやるべきことを定めて行動した人々の姿(その中には福島原発の現場で踏ん張ってる人たちもいる)が重なる。

本書で言う「リーダーシップ」って言うのは、


<リーダーシップとは、自分の価値観どおりに行動する力>(P.136)


だからね。

危機に際して、人々を行動に向かわせるのは何か?

勿論、「生存本能」はある。
だが、身の危険を顧みず行動した数々の事例を見聞きすると、それだけじゃないことは明らかだろう。
そこには確かに「自分の価値観」があると思う。


作者はこうした「リーダーシップ」はグローバル化する世界において不可欠であると説いているが(第2部)、今回の震災はその速度を早めてしまったのかもしれない。
少なくとも中長期的に見て、今後の日本が「311」以前の日本に立ち戻ることがあるとは思えない。
僕は日本は立ち直ると確信しているが、そこに現れる社会は、今の社会と同じではない(同じであってはならない)とも思っている。
そこで生きる人間に取って不可欠なのは、正にこういう「リーダーシップ」なんじゃないかな。。



作者は作品を「将来、なにか困ったときの娘」に向けて書くといい、本書についても、コンビニであったアジア系外国人のバイトの姿に重ねつつ、


<私の娘は、もしかしたら中国やブラジルのコンビニでバイトしながら、なにがしかの「夢」追い求めるような人生を送ることになるかもしれません。少なくとも、これからの日本を考えるとき、ずっと娘が日本にいるという未来は描けません。>(P.205)


という将来像を想定してる。
「復興」というステージに入った日本は、復興需要によって成長曲線を描くからそういう将来は遠くなった?
いや、そんなことはないだろう。
復興のための経済力を手にするためには世界経済により積極的に組み込まれて行く必要がある。かつての高度成長が輸出産業に寄って下支えされたように。
それが成功するかどうかは、今の日本が「自ら変革しうるか否か」にかかっていると、個人的には思っているところだ。

日本が急速に国力を失うにせよ、
社会の構造を大胆に変革し、再び力強い社会を築き上げるにせよ。


出来うれば後者であってほしい。
そしてその中で僕は自分の息子に、「自分自身の価値観どおりに行動する」逞しさを備えて欲しいと強く願っている。


本書の意味はソコにあると思う。