鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「極北クレイマー」上・下

・極北クレイマー 上・下
著者:海堂尊
出版:朝日文庫


あんまり新作を発表するんで、もう文庫になってから読むことにしたw海堂尊氏の「文庫化」最新作。
財政破綻に瀕している自治体を舞台に、医療行政の失敗による医療体制の破綻、市立病院の経営難等を取り上げ、遂には産科医逮捕による崩壊に至るまでを描いている。
解説によると「夕張」を取材して描かれているようだが、(他の海堂作品同様)作品世界が日本の現状・未来の写し絵のようになっている。
特に本作にはその趣きが強いかな。


コンパクトにまとまった中に結構色々な展開が詰め込まれていて飽きないんだけど、本作の場合は「人間ドラマ」以上に「医療が抱える問題」が全面出て来ている印象。
逆に言うと、フィクション色の強い部分(「医療ジャーナリストの裏の顔」あたり)は浮いてるように感じるくらいだった。
ここは桜宮サーガ(だっけ?)にもつながる部分なんで評価は難しいんだけど、作品の質と言う点では持ち込まない方が良かったと思うよ。


終盤にはおなじみのキャラクター達も顔出しし(速水、清川)、ラストにはブラックペアンの世良医師も登場。
ここら辺は楽しめるサービスだった。
こういう感じならいいんだけどねぇ。


現実とのリンケージを考えると、現実はこのフィクションよりも先に行っちゃってるところがある。
それだけに続編が読んでみたいところ。

明るい未来ならいいんだけど、難しいかな?