鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「PRIDE」

・PRIDE 池袋ウエストゲートパークⅩ
著者:石田衣良
出版:文藝春秋(電子書籍)

10作目ですか。
ここらで少し休憩、
ということになったようだけど、まあいいタイミングだろうね。
個人的には「終わりにしてもいいんじゃないか」とも思うけど。
もっとも、ラストにするには本作はパンチ不足ではあるけどねw。


このシリーズの特徴として、今社会で問題になっている事象が作品の中にうまく取り込まれている。

携帯の個人情報
自転車の交通事故
地下アイドル
貧困ビジネス

こういうネタの拾い方にはいつもながら感心させられるところ。
一方でそれぞれのネタの掘り下げ方には「?」ってところもある。
もっと問題なのは、「ネタ」頼りになってしまうことで、ストーリーが薄っぺらになってきてることかなぁ。
各単行本のラストに収録される中編(本作では「PRIDE」)はさすがに気合いの入り方が違うようだけど、短編の方は肩すかしされたような印象すらあるくらい。
本作でもその構図は同じだった。


構造的問題は「キャラ」にあるんじゃないかと思う。
初期のこのシリーズの魅力は、ストーリーと時事性の関係もあったとは思うけど、それ以上にキャラクター達の魅力に負うところが大きかった。
そのキャラクター達は今もって健在なんだけど、シリーズとして「サザエさん」スタイルをとってるだけに(明確ではないけど)、リアリティがどんどん失われてるんだよね。
果物屋の店番はまだしも、「Gボーイズ」あたりになってくると、ここら辺の違和感はなおさら強くなってくる。

ハードボイルドのおっちゃん探偵ならいいけど、「若者」が主人公のシリーズだからねぇ。


個人的にはシリーズ再開するなら「長編」をメインにした方がいいと思うよ。
少なくとも時事的な「ネタ追い」スタイルはやめた方がいい。
魅力的な世界観とキャラクターを持ってるだけに、ここは考えどころ。
「あっ」と驚くような、新鮮なリニューアルを期待したい。
(おんなじスタイルなら、もうやめたほうがいい)


ちなみに、本作は電子書籍で読んだんだけど、価格は1200円でハードカバーより400円安い。
もうちょっと価格差があってもいいと思うけど、新作ならこんな感じかな?