鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「普通の家族がいちばん怖い」

・普通の家族がいちばん怖い 崩壊するお正月、暴走するクリスマス
著者:岩村暢子
出版:新潮文庫


確かに「怖い」。

その怖さは、紹介されている家族たちの有様から来るだけではない。
「間違いなく、自分の家族もこの『家族』たちに重なるところがある」
その想いから来る「怖さ」だ。


勿論、個々の振る舞いでは「これはないよなー」と思うことも少なくない。
首都圏の家族でデータを取っている分、夫婦とも地方出身の僕の家族とは微妙なスタンスの違いはあるようだ。
しかし次々と紹介されるデータの中には自分たちにも当てはまることや、考え方が重なることも出てきたりして・・・。

総体としては、正に「普通の家族がいちばん怖い」って印象。
自分たちも含めて・・・ってところが本書の一番の怖さだろう。


本書の主張のポイントは、

「家族のため、子供のため、って表面上は言ってるけど、実は『自分のため』っていうのが一番になってきてるんじゃないか?」

ってことだろう。
そしてその指摘は、アンケートの形態上、「母親」に向けられるように見える。


<本書は主婦を対象とした調査に基づいて書かれているため、主婦の発言や主婦の行動ばかり取り上げているが、(中略)そこに起きる問題が「主婦」や「母親」や「女性」に起因することだと考えているからでもない。仮に「主婦」に焦点を当てて調査をすればそのようなことが見えてくるということであった、その点誤解なきようにお断りしておきたいと思う。>(P.33)


って作者はチャンと注釈入れているんだけど、コレだけ並べ立てられたら、「『主婦』『母親』に問題がある」って印象になっちゃうわなw。

でも本書の欠点(?)の一つはここかも。


確かに「母親」の振る舞いに焦点が当てられた作品なんだけど、逆に言えば、不気味なほど「父親」の存在感が希薄なんだよね。
それは調査の仕方にもよるのかもしれないけど、それだけじゃないんじゃないかと。

むしろ「家族」から「父親」が降りてしまっている。

そんな印象さえ覚える。

「日本の家父長制度はそんなもん」

って意見もあるかもしれないけど、本書のデータには、存外家庭の伝統行事を担う「祖父」の姿は見えて来るんだよな。

本書ではあからさまになって来ないけど、ここらへんにも日本の家族問題の一端があるんじゃないか・・・と。


まあ読み終えて、

「じゃあ、どうせいっちゅうねん」

とも思うんだけどね。
本書はアンケートの分析結果の提示が主であり、提言をしているものではない、と言うのは分るんだけど、ここまで危機的状況を煽られると、

「それにしても」

とは言いたくなる。


ただ一方で翻って自分が提言する立場になることを考えると、これは実に難しいとも思う。
おそらくここに現れている姿は「結果」なのだ。
その解決を探るためには、「原因」に辿りつかなければならない。
しかしそれは恐ろしく錯綜し、深いものなのではないかという予感が・・・。

と言うか、今さら取り返しがつくことなのかどうかさえ、自信がもてない。


一番「怖い」のはこのことかもしれない。