鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「なくしたものたちの国」

・なくしたものたちの国
著者:角田光代、松尾たいこ
出版:集英社


「さとなお」氏のブログで絶賛されていた作品。
「さとなお」氏と「松尾たいこ」氏は知人らしいので、その評価を鵜呑みにしていいかどうかってのはあるんだけど(失礼!)、「角田光代」氏の作品は読んでみたいと思ってたところなので、「きっかけ」にして手にとってみた。


で、読み終えての感想・・・

「いい話じゃん」。

「さとなお」さん、疑ってすみませんでしたw。


イラストレーションと小説のコラボ作品なんで、てっきり「短編集」だと思ってたんだけど、実際は連作短編集。
各短編の主人公は同一人物で、連作の流れがヒロインの人生に重なるスタイルになっているので、一本の作品としてのまとまりはかなり強い印象があるね。
少なくとも最終話は、それだけ読んだら、「何が何やら」・・・って感じだろう。


「失ったもの」に対する「懐かしみ」をテーマにして、物語はどこか異世界的な仕掛けを施され、全体的にはセンチメンタルなファンタジーの色調がある。
それでいてその向うには「死」の影が重なっていて、決して作品としては軽くない印象だね。
「角田光代」、確かに評判になるだけはあります。

個人的には2話(死んだ猫の話)、4話(生まれなかった娘の話)がツボだったなぁ。


まあ敢えて言えば、作品の構成として「4話」と「5話(最終話)」の間にもう一話あったほうがいいかな。
その方が「物語の流れ」と「ヒロインの人生」の重なりが強調できる構図になるだろう。
個々の短編の独立性よりも連関性のほうが強く印象に残る作品だけに、「最終話」の置かれ方がチョット唐突な感じもするんだよね。
その「空白」感そのものが狙いなのかもしれないけどさ。
(それにしては個々の短編の完成度が高すぎる印象)


しかしこれは「敢えて言えば」の話。

印象的な「松尾たいこ」氏のイラストレーションとのコラボも素晴らしく、実に質の高い作品になっていると思う。
さすがにこういうのは「電子書籍」じゃなくて、「本」しかも「ハードカバー」で読みたい。
時に再読し、時にイラストを眺める・・・そんな風にして使われる作品だろう。


いい本だよ。