鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「デフレの正体」

・デフレの正体 経済は「人口の波」で動く
著者:藻谷浩介
出版:角川ONEテーマ21

<「経済を動かしているのは、景気の波ではなくて人口の波、つまり生産年齢人口=現役世代の数の増減だ」。この本の要旨を一言でいえばそういうことになりましょう。>(P.268)

・・・と、本書の内容については作者自身が簡潔にまとめてくれてますw。


まあ、もう少し詳細に整理すると、
前半で「生産年齢人口の増減」がどのように経済に影響するかを、流布している色々な経済に関する俗説・分析・対策への反論を加えながら説明。
後半でその対策を解説し、最後に高齢化対策について「意見」を披露。
・・・ってな構成かな。


非常に論理的な内容になっていて、かつシンプル。
実に分かりやすく、それでいて説得力のある本だと思う。
「生産年齢人口の減少」については、


①生産年齢人口が減るペースを少しでも弱めよう
②生産年齢人口に該当する世代の個人所得の総額を維持し増やそう
③(生産年齢人口+高齢者による)個人消費の総額を維持し増やそう


の3点を「目標」として設定し、それぞれ


①高齢富裕層から若者への所得移転
②女性の就労と経営参加の増大
③(労働者でなく)外国人観光客・短期定住客の受入増加


を対策として提示している。
いずれも具体的で説得力があると思うんだけど、どうかな?


ある意味、ここで提示されている状況と課題は、
「世代間格差」
と整理してもいいのかもしれない。


そして既得権益を抱えた高齢者層から若年層への権益移転を如何にスムーズに行うのか?


これが最大の問題となる。
「個人所得総額を増やすために若年層・女性層の所得総額を増やす」
確かにその通り。
だがそうした大きな流れを踏まえ、個々の企業にそのように振る舞え・・・って言ってもナカナカそうはいかないだろう。
そこには「部分最適/全体最適」の不一致が生じてるからね。
企業自身にとっては全体がそう流れれば流れるほど、自分自身はコスト削減・リストラを進めることが合理的判断になるんだから。


ここはやはり「官」の出番かと。
この「生産年齢人口の減少」という大きな流れを提示し、その影響と対策を明示した上で、社会的な合意を形成する。
社会的合意さえあれば、個々の企業の振る舞いはそこに影響されるからね。(作者が「エコ」について例示しているように)
これを最も効果的に行えるのは、やはり「官」しかない。
その「官」を動かすためにはマスメディアの影響力が最も重要なんだけど・・・そこが既得権益層に属してるあたりが問題なんだよなぁ。
まあ「世代間格差」については徐々に認識が広がってるとは思うけどね。
その速度に課題はあるけど・・・。


「世代間格差」の問題は、日本経済の課題にとどまらず、日本社会の安定という意味でも重要な問題だと思う。
僕自身は「世代間」の狭間の世代だと思うんだけど、子供を持ったことで、より若年層世代の未来に対する懸念を強く持っている。
本書はかなり売れているようだ。
となれば、その考えを踏まえて意見を述べる層も増えているということ。
そこから「何か」が生まれることを期待し、自分自身も微力を尽くしたいと思う。