鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読み物としては面白い。自己啓発本としては「?」:読書録「サードドア」

・サードドア  精神的資産のふやし方

著者:アレックス・バナヤン  訳:大田黒泰之

出版:東洋経済新報社

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最近評判の一冊。

小泉進次郎氏のFacebookにも、来日した作者との面談動画がアップされてましたね(だからどうってこともないですがw)。

「まあ、評判になってるし、読み終わったらメルカリにでも回せばいいか」

と思って、購入w。

でも、これが意外なほどに面白かったんですよ。


アウトラインはもう色んなところで紹介されてますよね。


「19歳のある日、<ビル・ゲイツに10代・20代向けのメッセージをもらうためにインタビューしたい>と思い立ち、その<ミッション>達成のため、テレビのクイズ番組に出演。見事賞金をゲットし、それを原資に、<ミッション>に取り組んでいく」


…ま、こんな感じ。

結果的には見事ビル・ゲイツへのインタビューを実現させるし、その他、色々な有名人(レディ・ガガとか、クインシー・ジョーンズとかも)へのインタビューも行うんだけど…。


読む前は、

「各有名人からのメッセージ」

が目玉の作品かと思ってたんですが、違うんですよね。

「<ミッション>達成のための、作者の悪戦苦闘」

…こっちがメイン。

しかも、「成功」よりも、「失敗」の方に焦点が当たってると言う…。

(したがって「最大の失敗」である、「ウォーレン・バフェットへのアプローチ」が本書の「山場」になっています)


題名となっている「サードドア」はこういうもの。


<僕がインタビューした人たちはみんな、人生にも、ビジネスにも、成功にも、同じやり方で向き合っている。僕から見たら、それはナイトクラブに入るのと同じようなものだ。常に3つの入り口があるんだ。

「まずファーストドアがある」(中略)

「正面入り口のことさ。長い行列が弧を描いて続き、入れるかどうか気をもみながら99%の人がそこに並ぶんだ」

「次にセカンドドアがある。これはVIP専用の入り口で、億万長者、セレブ、名家に生まれた人だけが利用できる」(中略)

「学校とか普通の社会にいると、人生にも、ビジネスにも、成功にも、この2つのドアしかないような気分になる。でも数年前から僕は、常に必ず…サードドアがあるとに気づいたんだ。

その入り口は、行列から飛び出し、裏道を駆け抜けて、何百回もノックして窓を乗り越え、キッチンをこっそり通り抜けたその先に、必ずあるんだ。(後略)>(p.334-335)


<「(中略)このドアもあのドアもそのドアも閉ざされているなら、どうすればいい?

自分の力で解決するしかないじゃない。常識を働かせたり、人脈を作ったりしてね。どうやってドアを開けたかは問わないわ。とにかく中に入るしかないのよ」>(ジェシカ・アルバP.389)


要は「人脈を作って、活用せよ!」って感じなんだけど、「じゃあ、それで成功したのか」って言うと、「成功したケースもあれば、失敗したケースもある」ってのが結論。

「最大の失敗:ウォーレン・バフェット」は、まさにこの「サードドア」をめぐっての大失敗になってます。

(「サードドア」自体は「人脈」だけを意味するんじゃなくて、「正規ルートだけじゃなくて、自分で色々考えて、課題解決しろ!」ってことではあるんですが)


そして本書のククリにはこんな言葉も。


<重大な局面で、魔法使いのダンブルドアがハリーに言う。

「君が何者であるかは、君の持ってる能力ではなく、君の選択によって決まるんだよ」

選択したもの…能力ではなく…。

(中略)

小さな決断によって、誰もが人生を大きく変えることができる。

みんなが並んでいるから何となく行列に加わり、ファーストドアの前で待つのも自由だ。

行列から飛び出して裏道を走り、サードドアをこじ開けるのも自由だ。

誰もが、その選択肢を持っている。

これまでの旅で学んだ教訓が1つあるとすれば、どのドアだって開けられるということだ。

可能性を信じたことで、僕の人生は変わった。

可能性を信じられる人間になることで、可能性を広げることさえできるんだ。>(p.434-435)


「今まで言ってたんは何や!」

って卓袱台返しっぽくもあるんですがw、考えてみたら「ドアにどうやって入るか」ってのは付随的なことですからね。

「ドアに入ったあと、何をするつもりなのか?」、煎じ詰めれば「自分が相手に何を与えることができるのか」「自分はどう言う人間なのか」…って話。

ドアを開けたら、<こんな>じゃ、そりゃ嫌だw。

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読み物としては、アグレッシブな主人公の行動力や、有名人たちの言動、セレブたちのネットワークみたいなものを面白く読ませてもらいました。

が、ノウハウ的な「自己啓発本」「ビジネス本」としてはどうかなぁ。

もし自分の子供がこんな風に生きて行きたいって言ったら、

…う〜ん、止めちゃうかもしれません。

何だかんだ言って、ちょっと「怪しげ」やもんw。


ただ「行き着いた先」については、割と同感できたりもして。

そういう意味では読み終えた後でも、本書をどういう風に自分の中で位置付けたらいいのか、ちょっと迷ってるところもあります。

自分自身が培ってきた「時代観」「仕事観」「人間関係観」が、これからの時代にも通用するかどうかは、何とも言えないと思ってるのも事実ですし。

自分じゃあ、作者のような生き方は出来ません。

だからって、否定するもんじゃないよね…って話。


でも子供にオススメ…う〜ん、どうかなぁ…。

(子供からしたら、「余計なお世話」、かw)

お子様にはオススメできません:映画評「ラブ&ドラッグ」

なぜかprimeVideoの「オススメ」に出て来たので、視聴。

ちょっとコメディを観たい気分だったので。

 

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Love & Other Drugs


ジェイク・ギレンホール、アン・ハサウェイ主演の「おバカ・ラブコメディ」かと思いきや(ポスターはそんな感じですやん)、「ラブコメディ」だけど、「おバカ」じゃない。

(おバカ・コメディ大好きですけどね。「メリーに首ったけ」とか「ハングオーバー!」とか)

終盤は「コメディ」ですらなくなるという…。

ま、だからこそ、ギレンホールもハサウェイも出演をしたのかもしれませんがね。


ただセックス絡みのコメディが多いので、「お子様」にはオススメできません。ベッドシーン、満載ですから。

(「ベッド」じゃないシーンも…)

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ギレンホール&ハサウェイのヌードを楽しみたい方には、オススメですw。


後半のマジ展開に比べて、前半の「能天気」展開の時の<チャラ男>ギレンホールは最高に楽しい!

個人的にはこのノリで全編行って欲しかったです。(スパイダーマンの「ファー・フロム・ホーム」の中盤はちょっとこういうノリでした)

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すっかり「演技派」印のギレンホールですが、案外「素」は楽しいお兄ちゃんなのかも

…と思わせるところが「演技派」かw。


正直いうと作品としてのバランスはちょっと「?」かもしれません。

でも「旬」の主演二人(二人とも笑顔が最高)を眺めるだけでも価値ある作ではないか、と。


濃いけどね!w

はてなブログと併用で使おうかな、と。:読書録「noteではじめる新しいアウトプットの教室」

・noteではじめる新しいアウトプットの教室  楽しく続けるクリエイター生活

著者:コグレマサト[ネタフル]、まつゆう*

出版:インプレス

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ブログ自体は多分もう「10年選手」。

基本的に「自分への覚え」+αなんで、全然アクセスは稼いでませんがw。

 

で、ツールは今は「はてなブログ」を使ってます。

1番の理由は「スマホファーストだから」。

実際、書き込みの9割以上はアプリからですからね。(iPad Proが7割、iPhoneが2割強って感じ)

 

ただ同じツールを使い続けるのは、自分への刺激っていう点でも「どうかな?」と思うところがあって、ほかのツールにも目配りはしてます。

で、最近目についてた「note」に関する書籍が出てたので、読んでみました。

 

note自体は1年前にアカウントは取ってるんですけどねw。

ただその時は「う〜ん…」って感じもあって、写真をアップしただけで、その後放置していました。

本書を読みながら、ここ2日改めて使ってみて、

「ちょっと使い続けてみようかな」

と思ってるところです。

 

ただし「はてなブログと併用」で。

 

noteに関しての「今のところの」僕の感想はこんな感じです。

 

・アウトプットはしやすい

・「マガジン」という概念はすごくいい

・アプリの使い勝手は「はてな」よりイイ(写真のアップなんか特に)

・他の人のnoteを読むのが結構面白い(特にマンガ、写真、イラストあたり)

・過去の自分の記事の確認がしづらい(ストック対応が今ひとつ?「この本、読んだことあったっけ?」ってことの多い僕には必須の機能なんですが)

・スマホファーストじゃない(色んなコンテンツのアップとか考えるとそうなるか、とも思います)

 

「面白い」とは思いつつ、「自分は使わないな」と思ってるのが「課金機能」w。

今のところ有料コンテンツを購入はしてませんが、これは面白そうなのがあれば手を出すかもしれません。

 

一言で言えば、

「ストックとフローの間くらいのポジションが<note>に一番適してるかな?」

ってこと。

 

…と言うわけで、現状の「使い分け」の方針は以下。

 

・「読書録」「映画評」等のメインは「はてなブログ」(ストックとして)

・「写真」はInstagramメイン。ただストック的には「note」も併用。

・ストックを意識しないような記事については、「note」の方をメインで考えてみる。

・「はてな」も「note」もFacebookには連動させて、自分としての一覧はFacebookで取る。

 

ま、「note」の機能も把握しきってるわけじゃないんで、今後の使い勝手によっては変わってくるかもしれませんがね、ここら辺の「使い分け」も。

(多分、僕の友人はFacebook経由でアクセスしてくれる人が多いと思うので、あんまりツール変更の影響はないかもね、とは思ってます)

どこまで<人間>を信じれるか:読書録「無人の兵団」

・無人の兵団  AI、ロボット、自律型兵器と未来の戦争

著者:ポール・シャーレ  訳:伏見威蕃

出版:早川書房

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ビルゲイツが「2018年トップ5」に選出した作品。

米レインジャー部隊出身の軍事アナリストが、自律型兵器を軸に、AIの導入も視野に入れながら、最新兵器の現状、今後の可能性、それによって変化する戦争・政治のあり方、その中で取るべき方向性の選択肢等について論じています。

 

具体例がたくさん出てきますし、現場・後方を通じて、実際に「開発」「運用」を行なっている人物に取材しているので、リアリティ満載。

安易に「開発、配備はんた〜い」とはならず、その<可能性>(メリット)も押さえつつ、<人間>存在の意義(哲学的な意味もありますが、より現実的にも)に踏み込みながら、今後の方向性を提言してくれています。

確かに「未来の戦争」を考える上で、重要な論拠を提示してくれる作品だと思いますね。

 

僕が読んで思ったのは、

「自律型兵器って、もう結構あるんやね」

ってこと。

まあ、ある意味「ガトリング・ガン」からスタートしてるとは言えますが、現代的な意味での「自律型兵器」も、「イージス艦」から韓国のロボット巡回兵、さらには「完全」自律型兵器である「ハーピー」まで、実際に配備・運用されている自律型兵器は少なからずある。

作者は兵器システムとして<OODAループ>(観測、方向付与、決定、行動)に焦点を当て、

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そのループの「中」に<人間>が組み込まれているか、組み込まれていなくても<人間>が監視している体制を重視していますが、「兵器」そのものは、もはや「実現」している、もしくは「一歩手前」(特にAIがらみなんかは)なんや、と。

 

読んでて、ホッとするのは、各国軍隊の中枢部が「完全自律型兵器」(OOCAループを全て自律して行う兵器)に対してはネガティブで、<人間>の関与が必要だと認識していること。

実例としても、<人間>が関与していることで「破滅的局面」を回避した例が本書内には多く紹介されています。(核の相互牽制…も結構危うい局面があったんやと、やや冷や汗も)

先日見た「ハンターキラー」もそうですが、「人間の(ときに不合理にも見える)判断」が、大局的には破滅的危機を回避する…ってのはハリウッド映画の「お約束」。

それが「フィクション」じゃないケースが少なからずある、っちゅう話です。

怖い話やけど。

 

その「認識」がありながら、一歩進まざるをえないリスクもあるという認識も共通するというのが、懸念点。

・他国が先んじて「完全自律型兵器」を開発・配備するのではないかという危惧

・人間の反射速度が追いつかない「戦場」の可能性(サイバー戦争はすでにその領域)

自律兵器の方が、「人的被害」を少なくすることができる…という見方も、中長期的には「危うさ」を増している様にも思います。

自分が危機に直面する立場になったら…とも思いますがね。(極東アジア情勢が不安定化している現状は、それを「想像」の範囲から引き出しつつあるのかもしれません)

 

<抑制ーあまりにも危険で非人道的な兵器の使用を控える意識的な選択ーが、いま必要とされている。(中略)自律のどういう応用が適切であり、なにが行き過ぎで、戦争における人間の判断を放棄しているかについて、各国は了解点をまとめるために協力しなければならない。これらのルールは、人間の意思決定を尊重する気持ちを護るだけではなく、戦争における人間の失敗の多くを改善しようとするものでなければならない。(中略)

機械には多くのことができるが、意義を創造することはできない。(中略)私たちがなにを尊重しているか、どういう選択をすべきかを、機械は答えることができない。私たちが創造しようとしている世界には、知能を持つ機械がいるだろうが、その世界は機械のためのものではない。私たちのための世界なのだ。>(「結論」より)

 

その通りだと思います。

でもこういう意見も…。

 

<「だれが[AIの]リーダーになるにせよ、それが世界の支配者になるだろう」>ウラジミール・プーチン

 

自分を、相手を、<人間>を信じれるか?

 

問われているのはココです。

 

ブラッド・ピットは最高のバディ:映画評「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」

「キル・ビル」以降のタランティーノ作品は、なんとなくビデオ視聴になってたんですが(長いからなぁw)、久しぶりに公開で観ました。

60年代末のハリウッド

…って題材が気になりまして。

 

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Once Upon a Time in...Hollywood

 

なんとなく「シャロン・テート殺人事件を描く」みたいな感じになってますが、(間違いじゃないけど)基本的には<1969年>のハリウッドのスナップ写真…みたいな感じかな。

デカプリオ演じる主人公の<再生の物語>みたいなストーリーもあるんですが、全編を通じるようなストーリーラインはあまりありません。

 

<最初はお話を作ろうとしたんだよ。エルモア・レナードの「ゲット・ショーティ」みたいな。でも、ストーリーなんていらないや、と思ったんだ。それより、彼らには普通のハリウッドの日常を過ごしてほしいと。>(タランティーノ談。パンフより)

 

「物語」を期待すると、肩透かしを食うけど、

「パルプ・フィクションみたいなもんか」

と思うと、楽しめるんじゃないか、と。

虚実交えてたくさんの登場人物が登場するんだけど、どのキャラも活き活きしてて、惹きつけられます。

 

で、デカプリオとブラッド・ピット。

悔しいけど、ええ感じ。

 

虚勢を張りつつ、「俳優」としての自負と、誠実さと、弱さを持つデカプリオ演じる「リック・ダルトン」

心の中に虚無と闇を抱えながらも、リックとブランディ(犬w)という<相棒>と日々を生きるブラピ演じる「クリフ・ブース」

 

ブラッド・ピットは「オーシャンズ」シリーズで、ジョージ・クルーニーと相棒を好演してますが、本作のバディっぷりも良い感じです。

誠実なんだけど、どこか危うさがあって、そこを相棒の存在が支えている。

そんな感じかなぁ。

 

この二人だから、ハッピーエンドの向こうにも日々は続いてほしい。

それは「フィクション」でしかありえないことなんだけど。

 

どこか切なさを感じさせる「ハッピーエンド」に、そんなことを思ったりもしました。

それは「ありえたかもしれない」けど、「訪れなかった」日々ですが…。

(そして「クエンティン・タランティーノ」という存在は、断ち切られた日々の「後」に生まれたモノによって形作られた存在でもあるんですよね。

だからこそ「Once Upon a Time」…)

 

マンソン事件のインパクトを実感できないので、本作の魅力や意義を十分に受け取れたとは思いません。

それでも十分、僕は楽しめました。

日本でヒットするかどうかは、なんとも言えないけど。

 

PS  ちょっと騒動になってる「ブルース・リー」の件。

日本を始め、アジア映画やマイノリティにも理解の深いタランティーノだけに、ちょっと残念な気はします。

ただまあ、ブルース・リーにこうい面はあったとは思いますがね。